オフィス移転の見積もりや契約書で、「敷金」と書かれていることも「保証金」と書かれていることもあります。
どちらの名称が使われるかはビルや貸主によって異なり、名称自体に決まったルールがあるわけではありません。
大切なのは呼び方ではなく、何ヶ月分か、償却があるか、いつ返還されるかという契約条件です。
この記事では、敷金・保証金の実務上の考え方、相場、返還の仕組みを解説します。
目次
この記事で分かること
- 敷金・保証金という名称の実務上の扱い
- 30〜100坪クラスの相場感
- 償却(敷引き)の考え方
- 返還までの流れと期間
- 資金計画で注意すべきポイント
結論
敷金も保証金も、貸主へ預け入れる、担保的な性質を持つお金という点は共通しています。
どちらの名称を使うかはビルや貸主によって異なり、オフィス賃貸だからといって必ず「保証金」と呼ばれるわけではありません。
重要なのは名称ではなく、契約書に記載された「何ヶ月分か」「償却があるか」「いつ返還されるか」という条件です。
同じ「保証金」という言葉でも、ビルによって条件が大きく変わるため、契約前に条項の中身を確認する必要があります。
敷金・保証金という名称について
結論として、「敷金」か「保証金」かという名称よりも、契約条項の中身を確認することが重要です。
オフィス賃貸の契約書では、敷金という表記も保証金という表記も、どちらも一般的に使われています。
どちらの名称を使うかは、法律上の決まりではなく、ビルや貸主の慣習によるところが大きいです。
そのため、契約書に「敷金」と書かれているからといって条件が軽いとは限りませんし、「保証金」だからといって償却があるとも限りません。
確認すべきは次の3点です。
- 何ヶ月分か
- 償却(敷引き)が設定されているか、設定されている場合は何%か
- 返還時期はいつか、返還までにどのような手続きが必要か
相場はどれくらいか
結論として、私たちが主にご支援している東京23区の30〜100坪クラスでは、賃料の6〜10ヶ月分程度が目安となる傾向があります。
大型・築浅ビルでは12ヶ月以上となるケースもあります。
- 大型ビル・築浅ビル:賃料の10〜12ヶ月分程度となることがある
- 中規模ビル:賃料の6〜10ヶ月分程度が多い傾向
- セットアップオフィス:賃料の6ヶ月分程度で設定されているケースもある
セットアップオフィスは什器や内装が既に整っている分、預け入れ金額が抑えられていることがあります。
近年、セットアップオフィスは増えており、初期費用を抑えたい企業に選ばれる傾向があります。
※エリア・ビルグレード・貸主の方針によって異なります。
償却(敷引き)とは
結論として、償却とは退去時に無条件で差し引かれる金額のことです。
預け入れた金額のうち、一定割合または一定月数分が返還されない仕組みを指します。
償却は必ず設定されているわけではなく、償却なしの契約も少なくありません。
例えば「10ヶ月分、償却20%」という契約であれば、退去時に2ヶ月分は原則戻りません。

償却の有無や割合は契約書に明記されているため、契約前に必ず確認が必要です。
償却の有無によって実質的な移転コストが変わるため、見積もり比較をする際は、初期費用の総額だけでなく、退去時に戻ってくる金額まで含めて判断することをおすすめします。
返還の仕組みとタイミング
結論として、返還は退去後すぐではなく、原状回復完了後になるケースが一般的です。
流れとしては、次のようになります。
- 解約予告を提出する
- 退去日までにオフィスを明け渡す
- 原状回復工事を実施する
- 貸主が原状回復の完了を確認する
- 償却分(設定がある場合)を差し引いた金額が返還される

返還までの期間は、契約書に「退去後〇ヶ月以内」と定められていることが多く、返還までに1〜3ヶ月程度かかるケースもあります。
また、原状回復の範囲について貸主と借主で認識がずれることもあるため、契約時点で工事範囲を確認しておくと、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。
貸主審査との関係
結論として、預け入れる金額は貸主審査の結果によって変わることがあります。
貸主審査では、企業の財務状況や事業内容が確認されます。
私たちが30〜100坪クラスのオフィス移転をご支援する中でも、当初提示されていた月数が、審査の過程で見直されたケースがありました。
特に設立間もない企業や、事業内容が独自性の高い場合は、多めの金額を求められる傾向が見られます。
このため、資金計画は「提示された金額」だけでなく、「審査後に変動する可能性」も踏まえて余裕を持たせておくことをおすすめします。
資金計画で気をつけたいこと
結論として、敷金・保証金は退去まで動かせない資金として考えておく必要があります。
移転時の初期費用は、これ以外にも仲介手数料、前家賃、内装費、什器費用などが重なります。
賃料の6〜10ヶ月分となると、まとまった資金が必要になるため、移転の半年〜1年前から資金計画を立てておくと安心です。
また、現オフィスの解約予告から新オフィスの契約までの間、二重賃料が発生する期間が生じることもあります。
支払いタイミングと二重賃料の期間が重なると、資金繰りが一時的に厳しくなることもあるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。
比較表
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 名称 | 「敷金」「保証金」どちらの表記もあり、名称だけで条件は判断できない |
| 相場(賃料倍率) | 東京23区で6〜10ヶ月分程度が目安、大型ビルは12ヶ月以上、セットアップオフィスは6ヶ月分程度のケースも |
| 償却の有無 | 設定されている契約とされていない契約がある。契約書での確認が必須 |
| 返還時期 | 原状回復完了後、数ヶ月かかることもある |
| 審査への連動 | 貸主審査の結果で金額が変動することがある |
※あくまで一般的な傾向であり、ビルや契約条件によって異なります。
実例
50坪から80坪へ移転した企業では、預け入れ金額の月数が貸主審査の過程で見直され、当初提示より増額となったケースがありました。
また、別の企業では、退去時の原状回復工事の範囲について貸主と認識の相違があり、返還が想定より遅れたことがありました。
このように、敷金・保証金は金額そのものだけでなく、審査や返還までのスケジュールにも影響することがあるため、早めの情報整理が大切です。
FAQ
Q1. 敷金と保証金は何が違うのですか?
呼び方の違いであり、どちらもオフィス賃貸で使われる表記です。名称による優劣はなく、契約条項の中身を確認することが重要です。
Q2. どちらの名称が使われるかは何で決まりますか?
法律上の決まりではなく、ビルや貸主の慣習によるところが大きいです。同じビルでも契約書によって表記が異なることもあります。
Q3. いつ支払いますか?
一般的には契約締結時、または契約締結後の指定期日までに支払うケースが多いです。契約書に支払期限が明記されています。
Q4. 分割払いできますか?
貸主によって対応は異なります。一括払いが原則というビルもあれば、相談に応じてもらえるケースもあります。
ただし、実務上は分割払いを希望したことで、貸主が資金面について慎重に判断するケースもあります。その結果、貸主審査に影響する可能性もあるため、分割払いを希望する場合は、仲介会社へ事前に相談したうえで進めることをおすすめします。
Q5. 償却がない契約は必ず有利ですか?
一概には言えません。償却の有無だけで判断するのではなく、保証金の額や賃料、原状回復条件なども含めて、契約条件全体を比較することが大切です。
Q6. 返還が遅れることはありますか?
原状回復工事の完了確認に時間がかかる場合や、貸主側の事務手続きにより、契約書記載の期日より遅れることもあります。
Q7. セットアップオフィスは金額が抑えられますか?
内装や什器が整っている分、賃料相場は高めでも預け入れ月数が抑えられているケースが見られます。ただし物件ごとの違いが大きいため、個別確認が必要です。
Q8. 交渉できますか?
物件や貸主の方針によっては、月数や償却割合について相談できるケースもあります。ただし必ず交渉できるわけではなく、審査による総合判断になります。
Q9. 税務上の扱いはどうなりますか?
償却部分の処理や勘定科目の扱いは、契約内容や会計方針によって異なります。正確な処理については、顧問税理士への確認をおすすめします。
まとめ
敷金・保証金は、どちらの名称が使われるかではなく、契約条項の中身を確認することが大切です。
相場は東京23区で賃料の6〜10ヶ月分が目安ですが、償却の有無や返還時期は契約ごとに異なります。
貸主審査によって金額が変動する可能性もあるため、余裕をもった資金計画を立てておくと安心です。
移転スケジュールと資金繰りは連動しているため、早い段階での情報整理が、スムーズな移転につながります。
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