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二重賃料とは?発生する理由と負担を抑える方法

二重賃料は、段取りが悪いから起きるものではありません。正しい順番で移転を進めるほど、構造的に発生します。

だから「避ける方法」を探すより、何か月分になるかを先に把握して、短くする打ち手を持っておくほうが早い。

この記事では、二重賃料が発生する仕組み、金額の目安、入居可能日という見落としやすい判断軸、そして予算と稟議への載せ方までを実務の順番で整理します。

この記事で分かること

  • 二重賃料とは何か、なぜ正しい順番で進めても発生するのか
  • 即入居可の物件では、重なりが3か月分ほどになりやすい理由
  • 旧オフィスの賃料と共益費から負担額を計算する考え方
  • 入居可能日・フリーレント・時期を変えた交渉という4つの打ち手
  • 敷金と実質コストを分けて稟議に出す書き方

結論

二重賃料とは、旧オフィスの賃料と新オフィスの賃料を同じ月に両方支払う期間のことです。解約予告は原則、新オフィスの契約後に出すため、予告期間(オフィスでは6か月前が多い)と入居までの準備期間が重なり、二重賃料は構造的に発生します。

即入居可の物件では、重なるのは3か月分ほどになることが多い。工事の内容や社内の動き方で前後しますが、多くの場合ゼロにはなりません。打ち手は「重なる期間を短くする」か「実質負担を圧縮する」の2方向です。

物件選びでは賃料・坪数と同じ列に「入居可能日」を並べる。そして二重賃料を最初から予算に入れて稟議に出す。ここを外さなければ、後から差し戻されて区画を逃すことはありません。

二重賃料とは?旧オフィスと新オフィスの賃料が重なる期間のこと

二重賃料とは、旧オフィスの賃料と新オフィスの賃料を同じ月に両方支払う期間のことです。移転の予算を組むときに、抜け落ちやすい費用の代表がここです。

重なるのは賃料だけではありません。共益費も同時に発生します。旧オフィスの原状回復工事が入居後にずれ込めば、その分の期間も旧オフィス側に残ります。

発生源は2つに分けると分かりやすくなります。

  • 解約予告期間 — 退去を伝えてから契約が終わるまでの期間。オフィスでは6か月前を求められることが多い
  • 入居までの準備期間 — 新オフィスの契約後、内装工事や什器の搬入を経て実際に入居するまでの期間

この2つは同じ時間軸の上を走ります。どちらかが短くならない限り、重なりは消えません。

解約予告とは、退去の意思を貸主へ正式に伝える通知です。 住居用の1か月前とは前提が違い、オフィスでは6か月前の通知が多い。ここを住居の感覚で見積もると、予算が大きくずれます。

なぜ二重賃料は発生するのか

段取りが悪いから発生するのではありません。正しい順番で進めるほど、二重賃料は構造的に発生します。

理由は解約予告のタイミングにあります。解約予告は原則、新オフィスの契約後に出す。先に出せば、行き先が決まらないまま退去期限だけが迫ってくるからです。

退去期限が先に決まった状態で探すと、条件を交渉する余裕はなくなります。空いている区画から選ぶしかない——これが、順番を崩したときに起きることです。

契約後に予告を出すと、時間の流れはこうなります。

  1. 新オフィスの賃貸借契約を結ぶ
  2. その直後に旧オフィスへ解約予告を出す
  3. 予告期間(6か月なら6か月)が始まる
  4. 並行して内装工事・什器手配を進め、新オフィスへ入居する
  5. 入居後も、旧オフィスの予告期間はまだ残っている

5番が二重賃料です。避けるものではなく、短くする・圧縮するものとして扱ってください。

2026年はここがさらにタイトです。オフィス需要が高く空室率が低いため、貸主から「契約後、遅くとも3か月以内に入居してほしい」と言われることが多い。入居を後ろへずらして重なりを減らす調整が、しにくい市況になっています。

二重賃料は失敗の証ではありません。行き先が無いまま退去期限が来るリスクを避けるための、必要コストです。この位置づけを先に社内で共有しておくと、後の稟議で揉めません。

二重賃料は何か月分・いくらかかるのか

即入居可の物件を選ぶと、二重賃料は3か月分ほどになることが多くなります。 契約後すぐ内装に入り、最短の3か月で入居できたとしても、旧オフィスの6か月の予告期間はまだ明けていないためです。

ただし、決まった月数ではありません。内装工事の規模、什器や通信の手配、社内の意思決定の速さで前後します。予告期間が6か月でない契約なら、前提そのものが変わります。

逆に、入居可能日が先の物件なら重なりは短くなります。予告期間の満了と入居のタイミングが近づくからです。

新オフィスの入居可能日 二重賃料の考え方
即入居可 契約から入居まで約3か月の例。予告期間6か月なら約3か月分が重なる(入居までの期間は内装工事の内容や物件の状況によって1〜3か月程度で前後する)
入居日が先の物件 予告期間の満了に入居が近づく分、重なりは短くなる

物件の状況や工事の内容で前後します。それでも、この2択で数か月分の差が出ることは変わりません。

金額に置き換える

負担額は旧オフィスの賃料と共益費で決まります。坪単価の目安(共益費込み・30〜100坪の中小ビル)は次の通りです。物件によって前後します。

エリア 坪単価の目安
神田・コスト重視層(築古の中小ビル) 坪1万円前半〜半ば
神田・標準層(在庫の中心) 坪1万円半ば〜後半
神田・築浅/大型層 坪2万円以上
日本橋 坪2万円台
大手町 坪3万円台以上

文にしておきます。神田の標準的な中小ビルで50坪なら、坪1万円半ば〜後半として月75万〜90万円ほど。 これが3か月重なれば、数百万円規模の負担になります。

この金額は戻ってきません。ここが敷金との決定的な違いです。

物件選びで「入居可能日」を見落とさない

入居可能日は、二重賃料の長さを動かせる数少ないレバーです。賃料・坪数と同じ列に並べて見てください。

物件資料では、賃料・共益費・坪数・階数のあとに小さく記載されていることが多い。目立たないので、条件比較の表に入れないまま候補を絞ってしまいがちです。

「即入居可=好条件」ではありません。 見るべきは、自社の解約予告と噛み合っているかどうか。

  • 予告期間6か月で、入居まで3か月しかかからない → 約3か月分が重なる
  • 予告期間6か月で、入居可能日が数か月先 → 重なりは縮む

ただし2026年は、ここで選り好みできる場面が限られます。空室率が低く、30〜100坪の希望条件に合う区画がそもそも少ない。入居可能日を優先して候補を落とすと、見るものが無くなります。

だから実務では、この順で進めます。

  1. 立地・坪数・賃料で候補を出す
  2. 各候補の入居可能日を確認し、二重賃料が何か月分になるかを計算する
  3. その差額を予算に織り込んだうえで比較する

選択肢が少ない市況では、二重賃料を受け入れる前提で最初から予算に入れておくほうが早い。後から出てくると稟議が止まります。

二重賃料の負担を抑える方法

多くの場合、ゼロにはなりません。打ち手は「重なる期間を短くする」か「実質負担を圧縮する」の2方向です。

ただし、ゼロが不可能というわけではありません。内装工事の要らないセットアップオフィスを、入居可能日が旧オフィスの予告期間の満了と噛み合うタイミングで選び、さらにフリーレントも取れた場合は、重なりがほとんど無くなることもあります。

3つが同時に揃う物件は多くありません。それでも「必ず数か月は重なるもの」と決めてかかると、この可能性を最初から候補から外してしまいます。

① フリーレントで新オフィス側の負担をずらす

フリーレントとは、入居後の一定期間、新オフィスの賃料が免除される条件のことです。免除期間が二重賃料の期間と重なれば、実際に払う額はその分だけ減ります。

ただし近年は縮小傾向にあります。貸主が強気な市況では、期間が短くなるか、付かないこともある。あてにして予算を組まないほうが安全です。

② 入居可能日が予告期間と噛み合う物件を残す

候補を絞る段階で、入居可能日が先の物件を意識して残しておく。重なりが1〜2か月分に収まれば、それだけで数百万円単位の差になります。

ただし、ここには裏側があります。入居日が先の物件は、賃料交渉がしにくい傾向があります。 空室になるまでまだ間があり、貸主が焦る段階にないためです。

つまり、二重賃料を短くする選択と、賃料を下げる交渉は、同時には取りにくいことがある。次の③がその実例です。どちらを優先するかは、重なる月数と値下げ幅を金額に直して比べてください。

③ 賃料と入居日を交渉する——時期で答えが変わる

募集賃料と成約賃料は違います。 資料やネットに出ている数字は貸主の言い値で、決まった額ではありません。下がりやすい傾向があるのは、次の条件です。

  • 即入居できる状態の物件(空室期間がそのまま貸主の損失になるため)
  • 同じビルで複数フロアが空いている物件

ここで押さえておいてほしいのは、同じ物件でも聞く時期で答えが変わるという点です。

2026年に当社が扱った新築の物件では、4か月後に入居という条件のとき、貸主は強気で交渉の余地がありませんでした。入居まで間があり、貸主がまだ焦る段階になかったからです。 2か月後に改めて確認したところ、入居が近づいたぶん同じ物件で「入居時期を数か月後ろ倒しにする」か「坪1,000〜1,500円の値下げ」の余地が出ていました。

この値下げ幅は実際にあった1件の話で、相場ではありません。必ず下がるとも言えない。ただ、一度断られても、時期を変えて聞き直す価値がある——ここは知っておいて損はありません。

入居時期の後ろ倒しが通れば、それ自体が二重賃料の短縮になります。賃料交渉と入居日交渉は、同じテーブルの上にある話です。

④ 入居までの期間そのものを縮める

契約後3か月以内の入居を求められる市況では、内装・什器・通信の準備を契約前から並行して動かします。契約してから内装会社を探し始めるのでは、3か月に収まりません。

契約前の段階で、レイアウト方針・内装会社・什器の目処を付けておく。結果として入居が早まり、重なる期間が削れます。

予算と稟議に二重賃料をどう載せるか

二重賃料は、最初から予算に入れて稟議に出します。 後出しになると差し戻され、その間に良い区画が埋まります。

社内説明でつまずく原因は、ほぼ2つの数字を混ぜていることです。分けて書けば通りやすくなります。

区分 含めるもの
契約時に必要な資金 敷金・保証金、礼金、前賃料、保証会社費用、仲介手数料
最終的な負担額(実質コスト) 賃料・共益費、礼金、保証会社費用、原状回復費用、二重賃料 −フリーレント免除分

実質コストとは、契約期間全体で実際に負担する金額のことです。 賃料・共益費・礼金・保証会社費用・原状回復費用などの負担額から、フリーレントによる免除分を差し引いて計算します。

敷金・保証金は実質コストに含めません。 返ってくるお金なので、負担ではないからです(償却が設定されている場合、償却分だけが負担になります)。

ただし契約時に必要な資金には入ります。敷金・保証金は6〜10か月が目安で、物件によって前後します。

二重賃料は「最終的な負担額」の側の項目です。旧オフィスの原状回復費用も同じ側。両方まとめて、移転全体の負担として一度に提示してください。

意思決定の速さが、そのまま二重賃料の長さになる

稟議で止まる、代表者の再内見が翌週になる——その間に第一希望の区画が埋まります。次に選べるのは、条件を妥協した物件です。

入居可能日が合わない物件しか残らなければ、重なる期間は伸びる。決めるのが遅いことは、金額として跳ね返ります。

退去期限が決まっている企業からご相談を受けたときは、内見の前に決算書3期分と会社謄本などを揃えてもらい、代表者の内見をその週のうちに確保できるかを確認したうえで内見へ進んでいただきました。申込の段階で審査資料が出せる状態と、代表者がすぐ動ける日程。この2つが揃っていると、貸主側の答えが変わります。

良い区画が出たときにすぐ動ける状態を先に作っておくことが、二重賃料を最短にします。

よくある質問

Q. 二重賃料は避けられないのですか?

多くの場合、ゼロにはなりません。解約予告を新オフィスの契約後に出す限り、予告期間と入居までの準備期間は重なるためです。ただし、内装工事の要らないセットアップオフィスを予告期間の満了と噛み合う入居日で選び、フリーレントも取れた場合は、重なりがほとんど無くなることもあります。条件が揃う物件は多くないので、まずは期間を短くする・実質負担を圧縮するという前提で進めてください。

Q. 解約予告を先に出せば二重賃料は減りますか?

計算上は減りますが、実務では勧めません。行き先が決まらないまま退去期限が迫り、空いている区画から選ぶしかなくなります。条件交渉の余裕もなくなるため、結果的に損をしやすい進め方です。

Q. 二重賃料は何か月分を見ておけばよいですか?

即入居可の物件では3か月分ほどになることが多く、これが目安です。契約後すぐ内装に入り最短の3か月で入居できても、旧オフィスの6か月の予告期間はまだ明けていないためです。ただし内装工事の内容や社内の意思決定の速さで前後します。入居可能日が先の物件なら、その分だけ短くなります。

Q. 二重賃料の期間は賃料以外も発生しますか?

共益費も同時に発生します。旧オフィスの原状回復工事が入居後にずれ込めば、その期間も旧オフィス側に残ります。予算を組むときは賃料だけで計算しないでください。

Q. 二重賃料は敷金のように後で戻ってきますか?

戻りません。ここが敷金・保証金との決定的な違いです。敷金・保証金は返ってくるお金なので実質コストに含めませんが、二重賃料は最終的な負担額に入る項目です。

Q. フリーレントで二重賃料は相殺できますか?

免除期間が二重賃料の期間と重なれば、その分だけ実際に払う額は減ります。ただしフリーレントは近年縮小傾向で、期間が短くなるか付かないこともあります。あてにして予算を組まないほうが安全です。

Q. 募集賃料から下がることはありますか?

あります。ネットや資料の数字は貸主の言い値で、決まった額ではありません。即入居できる状態の物件や、同じビルで複数フロアが空いている物件は下がりやすい傾向があります。ただし必ず下がるわけではありません。

Q. 一度交渉を断られたら、もう条件は変わらないのですか?

時期を変えて聞き直す価値があります。2026年に当社が扱った新築の物件では、4か月後入居の条件では交渉の余地がありませんでしたが、2か月後に確認すると入居時期の後ろ倒しか坪1,000〜1,500円の値下げの余地が出ていました。この幅は1件の実例で、相場ではありません。

Q. 物件探しはいつから始めればよいですか?

入居希望日の5〜6か月前が理想です。内訳の一例は、探し始めから契約までに約3か月、契約から入居までに約3か月です(契約から入居までは内装工事の内容や物件の状況によって1〜3か月程度で前後します)。3か月前になると選択肢が減り始め、2か月前ではかなり厳しくなります。

Q. 稟議で二重賃料の説明がうまく通りません。どう書けばよいですか?

「契約時に必要な資金」と「最終的な負担額」を分けて書いてください。前者には敷金・保証金や仲介手数料が入り、後者には賃料・共益費・原状回復費用・二重賃料が入ります。二重賃料は後者の項目です。混ぜると数字の意味が読めなくなります。

まとめ

二重賃料とは、旧オフィスと新オフィスの賃料を同じ月に両方支払う期間のことです。解約予告は原則、新オフィスの契約後に出すため、この重なりは構造的に発生します。

即入居可の物件では3か月分ほどになることが多い。神田の標準的な中小ビルで50坪なら月75万〜90万円ほどが目安で、3か月重なれば数百万円規模になります。しかも戻ってこないお金です。

打ち手は4つ。フリーレント、入居可能日が予告期間と噛み合う物件を残す、時期を変えて賃料と入居日を交渉する、契約前から内装準備を並行させて入居を早める。内装の要らないセットアップオフィスなら、条件次第で重なりをほとんど無くせる場合もあります。

ただし入居日が先の物件は賃料交渉がしにくい。二重賃料の短縮と値下げのどちらを取るかは、金額に直して比べてください。

そして予算には最初から二重賃料を入れておく。稟議が止まっている間に区画が埋まれば、条件を妥協することになり、重なる期間はさらに伸びます。

ご相談について

当社は東京23区の30〜100坪を中心に、借主側の立場でオフィス移転を支援しています。ご相談・物件提案・内見のご案内までは無料です(ご契約時の仲介手数料は賃料1ヶ月分・税別)。

二重賃料が何か月分になるかは、物件の入居可能日と工事の内容で変わります。物件をご紹介する際に、入居可能日もあわせてお伝えします。

電話 03-6869-5265(平日9:00〜18:00)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。