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オフィス移転の賃料はどう決まる?坪単価と実質賃料の読み方

「坪単価が安い物件を選べばコストは下がる」——この前提のまま比較表を作ると、稟議で差し戻されます。

オフィスの賃料は坪単価×坪数+共益費で決まりますが、判断材料になるのはその金額ではありません。共益費込みに揃えた単価、フリーレントを割り戻した実質コスト、そして入居可能日。この3つが揃って初めて比較になります。

さらに、ネットに出ている募集賃料は貸主の言い値です。下がることもあり、同じ物件でも聞く時期で答えが変わります。

この記事では、賃料の読み方から交渉が通る条件までを、借主側の仲介として実際に扱っている範囲で整理します。

この記事で分かること

  • 賃料・共益費・契約面積の関係と、比較のときに共益費込み坪単価へ揃える理由
  • 実質コストの定義(敷金・保証金は含めない)と、契約時に必要な資金との分け方
  • 物件情報サイトのエリア平均が、30〜100坪の実勢より高く出る理由
  • 募集賃料から下がりやすい条件・時期と、賃料以外で折り合う方法
  • 入居可能日が二重賃料の長さを決める仕組みと、予算への入れ方

結論

オフィスの賃料は「坪単価×契約面積+共益費」で決まります。判断が分かれるのはその先で、共益費込みの坪単価に揃え、フリーレントを契約期間で割り戻し、入居可能日と二重賃料を足して初めて物件同士を比べられます。

敷金・保証金は返ってくるお金なので、実質コストには入れません。

 

募集賃料は決まった額ではありません。即入居できる区画や複数フロアが空いている物件は下がりやすく、入居時期が近づくと交渉の余地が出ることがあります。

ただし待つ間に埋まる市況です。代替候補が複数あるなら待てる、第一希望しかないなら待たない——その見極めが結果を分けます。

 

オフィスの賃料は「坪単価×坪数+共益費」で決まる

募集賃料の月額は、坪単価に契約面積を掛け、そこへ共益費を足した金額です。

賃料とは、坪単価(1坪あたりの月額)に契約面積(坪数)を掛けた金額のことです。式にすると「賃料 = 坪単価 × 坪数」。

 

共益費とは、共用部の維持管理にかかる費用として、賃料とは別に毎月払う金額のことです。

こちらも「共益費単価 × 坪数」で出ます。月額の合計は「(坪単価 + 共益費単価)× 坪数」です。

 

共益費に含まれるもの・含まれないもの

 

共益費でまかなわれるのは、共用部の清掃、エレベーターの保守、共用部の照明・空調、管理員の人件費などです。

一方、専有部で使う電気代は別請求の物件がほとんど。時間外空調料金、駐車場、看板の使用料も別建てが基本です。ここを見落とすと、入居後に「聞いていた金額と違う」となります。

 

比較するときは共益費込みの坪単価に揃える

物件を並べるときは、必ず共益費込みの坪単価に直してください。ここを揃えないと比較が成り立ちません。

30〜100坪の中小ビルでは、はじめから共益費込みで表示している物件と、別建ての物件が混在しています。募集図面を見たら、まず「共益費:別/込」の表記を確認する。実務ではここが最初の作業です。

 

表記 坪単価 共益費 共益費込み坪単価
A物件(別建て) 16,000円 2,500円 18,500円
B物件(込み表示) 18,000円 18,000円

 

坪単価だけならA物件が安く見えますが、揃えるとB物件のほうが安い。この状態のまま比較表を作り、稟議に出してから差し戻されるケースをよく見ます。表の数字は計算の例で、相場ではありません。

 

契約面積と、実際に使える面積は一致しない

 

契約面積には、共用部の按分が含まれていることがあります。同じ坪数でも、廊下やエレベーターホールの取り方で執務スペースとして使える広さは変わります。内見のときに「この面積で何席置けるか」を見ておくと、あとで席が足りなくなる事故を防げます。

物件情報サイトのエリア平均は実勢より高く出る

 

物件情報サイトや大手仲介が出しているエリア平均は、30〜100坪で実際に扱う水準より高く出ます。大型ビルの大区画が母数に入り、エリアの括りも広いためです。

平均値だけを見て「うちの予算では無理だ」と候補から外す必要はありません。30〜100坪という条件で在庫を見ると、実勢はもう少し手前にあります。

共益費込み坪単価でオフィス賃料を比較する方法

実質賃料とは何か──戻るお金と戻らないお金を分ける

実質コストとは、賃料・共益費・礼金・保証会社費用・原状回復費用などの負担額から、フリーレントによる賃料免除分を差し引いて、契約期間全体で実際に負担する金額のことです。

 

ここで混ざりやすいのが敷金・保証金の扱いです。敷金・保証金は実質コストに含めません。返ってくるお金なので、負担額ではないからです。償却が設定されている場合は、償却分だけが負担になります。

 

「契約時に必要な資金」と「最終的な負担額」を分ける

稟議資料は、この2つを分けて作ると通りやすくなります。混ぜると、経理側から必ず質問が来ます。

区分 含まれるもの 性質
契約時に必要な資金 敷金・保証金、前賃料、礼金、仲介手数料、保証会社費用 手元から出ていく総額
最終的な負担額(実質コスト) 賃料・共益費、礼金、保証会社費用、原状回復費用からフリーレント分を差し引いた額 契約期間で本当に消えるお金

 

敷金は前者に入りますが、後者には入りません。この整理をしておくと、「初期費用が大きい」という理由だけで良い物件を落とすことがなくなります。

当社の仲介手数料は賃料1ヶ月分(税別)で、これは前者に入ります。相談・物件提案・内見のご案内までは無料のため、比較表を作る段階で費用は発生しません。

 

フリーレントは坪単価に換算して比べる

 

フリーレントとは、入居後の一定期間、賃料が免除される契約条件のことです。

 

比較するときは、免除額を契約期間で割って坪単価に直します。

式にすると「(月額賃料 × 免除月数)÷ 契約月数 ÷ 坪数」。こうしておくと、「賃料は高いがフリーレントあり」と「賃料は安いがフリーレントなし」を同じ土俵に乗せられます。

セットアップオフィス(内装や什器が設置済みの物件)も同じ考え方です。賃料単価は高めに出ますが、内装工事費と什器購入費がかからないぶん、契約期間全体の実質コストでは逆転することがあります。

 

契約時に必要な資金と実質コストの違い

募集賃料と成約賃料は違う

ネットに出ている募集賃料は貸主の言い値であって、決まった額ではありません。実際、募集賃料から下がって成約することはあります。

 

下がりやすい傾向がある条件

  • 即入居できる状態の物件——空いている期間がそのまま貸主の損失になるため
  • 同じビルで複数フロアが空いている——1フロアでも早く埋めたい事情が働くため

 

空室は、貸主にとって毎月確実に出ていく損失です。多少の減額に応じてでも早く決めたい、という判断が働く場面があります。ただし「必ず下がる」とは書けません。下がりやすい条件と時期がある、という理解が正確です。

 

賃料以外で折り合うこともある

 

貸主は賃料単価を下げることを嫌がる場合があります。同じビルの他区画や次の募集に影響するためです。そういうときは、フリーレントの延長や入居時期の後ろ倒しで折り合うケースがあります。借主から見れば、どちらも実質コストは下がる。交渉の出口を「賃料減額」だけに絞らないほうが、結果として条件は良くなります。

 

同じ物件でも、聞く時期で答えが変わる

 

一度断られた条件でも、時期を変えて聞き直す価値があります。これがこの記事で一番お伝えしたい点です。

入居時期が先の物件は、貸主が強気。まだ時間があるので、値下げしてまで決める理由がない。ところが、あと1〜2か月で即入居のタイミングに近づくと、態度が変わることがあります。

 

2026年に実際にあった話

 

新築の物件で、4か月後に入居という条件のときは、貸主が強気で交渉の余地がまったくありませんでした。

2か月後に改めて確認したところ、同じ物件で「入居時期を数か月後ろ倒しにできる」または「坪1,000〜1,500円の値下げ」の交渉余地が出ていました。

この値下げ幅は実際にあった1件の話であり、相場ではありません。ただ、同じ物件・同じ担当者でも聞く時期で答えが変わるという事実は、現場で何度も経験しています。

 

ただし、待っている間に埋まる

2026年はオフィス需要が高く、空室率が低い状態が続いています。交渉のために2か月待つ判断は、その間に他社が決めるリスクを引き受けることでもあります。

見極めは代替候補の数です。同じ条件で戦える候補が複数あるなら待てる。第一希望しかないなら、待たずに条件を詰めたほうがいい。

 

賃料と一緒に見るべき「入居可能日」

 

物件の「入居可能日」は、二重賃料の長さを左右する数少ないレバーです。賃料・坪数・立地だけで決めず、ここも比較項目に入れてください。

 

解約予告は原則、新オフィスの契約後に出すもの。先に出すと、行き先が決まらないまま退去期限だけが迫ります。その結果、二重賃料は構造的に発生します。

契約後に予告を出す以上、予告期間が明けるのは新オフィスに入居した後になるからです。

 

即入居可を選ぶと、二重賃料は長くなる

 

即入居可の物件を契約してすぐ内装に入り、数か月で入居できたとします。

それでも旧オフィスの予告期間(6か月が多い)は明けていないため、「予告期間 − 入居までの月数」ぶんの二重賃料が出ます。

入居日が先の物件なら、予告期間の満了と入居のタイミングが近づき、二重賃料は抑えられる。つまり「即入居可=良い」ではありません。自社の解約予告と噛み合っているかで判断するものです。

 

賃料の安さと入居日、どちらが得か

比較軸 A:坪単価が安い・即入居可 B:坪単価が高い・入居2か月先
賃料差(契約期間の合計) 単価差 × 坪数 × 契約月数 ぶん安い
二重賃料の見込み 長い(予告期間 − 入居までの月数) 短い(Aより約2か月分少ない)

二重賃料は「旧オフィスの月額 × 重なる月数」で出ます。旧オフィスの月額が大きいほど、入居日の2か月の差が賃料差を上回ることは珍しくありません。

ただし2026年は空室率が低く、入居可能日で選り好みできる状況にありません。即入居可の物件しか出ていないことも多い。だからこそ二重賃料は最初から予算に入れておく。後から出てくると、そこで稟議が止まります。

入居可能日と二重賃料の比較

交渉が通りやすい会社と通りにくい会社の違い

貸主が見ているのは、いくら値切ってくるかではありません。確実に入居して、賃料を払い続けてくれるかです。審査では直近の決算内容、業種と事業内容、入居予定人数、保証会社の利用可否を見られます。決算書や会社案内は、申込の段階で出せるよう準備しておくと早い。

意思決定の速さが、そのまま条件になる

交渉が弱くなるのは、社内稟議も代表者の再内見も終わっていない状態で、条件だけ聞きに行く場合です。貸主から見れば「決める気があるのか分からない相手」なので、譲る理由がありません。逆に、社内の承認が下りていて「この条件なら明日申し込む」と言える会社は強い。同じ物件でも、返ってくる答えが違います。

実際にあった例です。ビルの建て替えで退去期限が決まっていて、その期限が迫っている企業からご相談を受けました。当社では内見の前に、決算書3期分と会社謄本などを先に揃えていただき、代表者の内見をその週のうちに確保できるかを確認したうえで、内見に進んでもらいました。申込の段階で審査資料が出せる状態と、代表者がすぐ動ける日程。この2つが揃っていると、貸主側の答えが変わります。

交渉を担うのは借主側の仲介です。どこまで踏み込めるか、いつ聞き直すべきかは、その物件の募集状況で変わります。ここは借主が自分で判断しにくいところです。

賃料を比較するときによくある間違い

比較表が間違っている状態で稟議に出ると、差し戻しになります。相談を受ける中でよく見るのは、次の6つです。

  1. 共益費込みと別建てを混ぜて比較している——最も多い。すべて共益費込みの坪単価に直す
  2. 契約面積と使える面積を同一視している——共用部の按分が含まれていることがある
  3. フリーレントの月数だけを見ている——契約期間・中途解約時の違約金条項とセットで確認する
  4. 償却の有無を確認していない——敷金が全額戻る前提で資金計画を組むと、解約時に狂う
  5. 電気代・時間外空調料金・駐車場・看板使用料が入っていない——専有部の電気代は別請求が基本
  6. 原状回復費用を予算に入れていない——旧オフィスの退去時に必ず発生する

特に3と4は、契約直前まで表に出てこないことがあります。申込前に、募集条件書と契約書のドラフトで確認してください。

原状回復費用は、貸主指定業者かどうか、スケルトン戻しの範囲がどこまでか、で金額が大きく動きます。旧オフィスの契約書を先に見ておくと、予算の当たりは付けられます。

よくある質問

Q. オフィスの賃料に消費税はかかりますか?

事業用として借りる建物の賃料・共益費は課税取引になります。住宅の賃料とは扱いが違い、募集図面の金額が税別か税込かで月額の見え方が変わります。比較表を作るときは、全物件を同じ基準(税別または税込)に揃えてください。

Q. 共益費だけを下げてもらうことはできますか?

実務では通りにくい部分です。共益費は共用部の清掃・エレベーター保守・管理員人件費など実際にかかる費用に紐づいているため、貸主が調整しにくいからです。負担を下げたい場合は、賃料側の減額やフリーレントの延長で交渉するほうが現実的です。

Q. フリーレント期間中も共益費は払うのですか?

物件によって異なります。賃料のみ免除で共益費は発生する条件が多く、共益費まで免除される物件もあります。実質コストを計算する前に、募集条件書で免除対象がどこまでかを必ず確認してください。

Q. 敷金・保証金の「償却」とは何ですか?

償却とは、預けた敷金・保証金のうち、退去時に返還されない分をあらかじめ定めた条項です。「保証金6か月・うち2か月償却」なら、2か月分は戻らない負担額になります。償却分だけが実質コストに入り、残りは返還されるお金として扱います。

Q. 契約面積は実際に使える広さと同じですか?

一致しないことがあります。契約面積に共用部の按分が含まれている場合、同じ50坪でも執務スペースとして使える広さが変わります。内見時に「この面積で何席置けるか」を確認しておくと、入居後に席が足りなくなる事態を避けられます。

Q. 賃料交渉はいつ切り出せばいいですか?

社内の承認が下り、申込の意思が固まった段階が最も通ります。稟議も代表者の確認も終わっていない状態で条件だけ聞くと、貸主から見て「決める気が読めない相手」になり、譲る理由がありません。意思決定の速さがそのまま条件になります。

Q. 一度断られた条件を、もう一度聞き直してもいいのですか?

問題ありません。むしろ時期を変えて聞き直す価値があります。入居時期が先の物件では貸主が強気でも、即入居に近づくと空室期間が損失になるため、賃料や入居時期の交渉余地が出ることがあります。同じ物件でも、聞く時期で答えが変わります。

Q. 仲介手数料はいくらかかりますか?

当社ではご契約時に賃料1ヶ月分(税別)です。ご相談・物件提案・内見のご案内までは無料のため、比較表を作って検討する段階では費用は発生しません。

Q. 二重賃料は避けられないのですか?

構造的に発生します。解約予告は原則、新オフィスの契約後に出すため、予告期間が明けるのは入居後になります。避けるのではなく、入居可能日の選び方とフリーレントで期間を短くする、という考え方で予算に組み込んでください。

まとめ

比較の土台は、共益費込みの坪単価に揃えることです。実質コストは「契約期間で本当に消えるお金」で、敷金・保証金は含めません。募集賃料は貸主の言い値で、条件と時期によって下がることがあり、出口は賃料減額だけではありません。

賃料と同じ重さで見るべきは入居可能日です。二重賃料の長さがここで決まるため、2026年の市況では最初から予算に入れておくほうが、あとで稟議が止まりません。

ご相談について

賃料の比較でつまずくのは、金額そのものではなく「揃え方」です。当社は東京23区の30〜100坪を中心に、借主側のパートナーとしてオフィス移転をお手伝いしています。手元の候補を共益費込み単価と実質コストに直す作業、二重賃料を含めた予算の組み立てからでも対応します。

更新期限が近い、解約予告の期限が迫っている、稟議の数字が固まらない。そんな段階でも構いません。電話 03-6869-5265(平日9:00〜18:00)またはお問い合わせフォームから、今の状況をお聞かせください。ご相談・物件提案・内見のご案内までは無料です。