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オフィス移転のBCP対策|耐震・備蓄スペースは契約前に決める

オフィス移転を機にBCPを整えたい。そう考えたときに最初につまずくのが、「何をどこまで物件選びに反映すべきか」です。

耐震性能は契約したら変えられません。備蓄スペースは坪数に跳ね返ります。どちらも物件を決めた後では手を打てない種類のものです。

東京23区で20〜50名・30〜100坪のオフィスを探す企業に向けて、何をいつ決めるかを実務の順番で整理します。

この記事で分かること

  • BCPのうち、物件を決める前に条件へ入れておくべき3項目
  • 新耐震かどうかを確認する正しい見方と、内見でその場で聞く6つの質問
  • 社員20名・30名・50名それぞれの備蓄量と、保管スペースの目安(公的な面積基準はありません)
  • 備蓄品を缶詰・レトルト・アルファ米から選ぶときの判断軸(ゴミの量と水の要否)
  • BCP対応で増えた坪数と賃料を、稟議で一度に通すための出し方
  • 移転スケジュールのどの時点で、BCPの何を決めるか

結論

BCP対策のうち物件条件に直結するのは、耐震性能・備蓄スペース・帰宅困難者対策の3つです。この3つは移転後ではなく、物件を探し始める前に決めます。

耐震は契約後に変えられず、備蓄スペースは必要坪数を押し上げ、帰宅困難者対策はトイレ数や非常用発電といったビル側の条件で決まるためです。

2026年は空室率が低く、条件を後出しすると検討中に区画が埋まります。「耐震も見たい」「倉庫も欲しい」を内見の後から足す進め方では間に合いません。

オフィス移転でBCP対策を考えるなら、物件を決める前に決めることがある

BCPとは、災害時に事業を止めない、止まっても早く戻すための計画です。オフィス移転では、物件条件に直結する部分だけを先に切り出すと進めやすくなります。

耐震性能・備蓄スペース・帰宅困難者対策の3つは、移転後ではなく、物件を決める前に条件へ入れておくものです。

理由は単純で、後から変えられないからです。耐震性能は契約後に手を入れられません。備蓄スペースは坪数に跳ね返るため、坪数を決めた後で「置き場所がない」と気づいても遅い。

先に決めておくべきことは、この3つです。

  • 耐震の許容ライン(新耐震のみか、旧耐震+補強済みも見るか)
  • 備蓄に使う坪数(社員数から逆算する)
  • 3日間社内に留まる前提で必要な設備(トイレ数・給水・非常用発電)

耐震性能・備蓄スペース・帰宅困難者対策の3条件

耐震性能はどこを見ればいいのか(新耐震・旧耐震・免震・制振)

新耐震基準とは、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準です。見るのは建築確認を受けた日付であって、募集図面の「築年」ではありません。

築年月が1982年でも、確認申請が1981年5月なら旧耐震になります。ここを取り違えると、条件の判断そのものがずれます。

構造の違いは次のとおりです。

  • 耐震構造とは、建物自体の強度で揺れに耐える構造です。中小ビルの大多数がこれにあたります。
  • 免震構造とは、建物と地盤の間に装置を入れ、揺れを建物に伝えにくくする構造です。
  • 制振構造とは、建物内部のダンパーで揺れのエネルギーを吸収する構造です。

ただし実務上、免震・制振はほとんど選択肢に入りません。30〜100坪を扱う中小ビルでは少数派で、大型ビルに偏っているためです。

現実的な判断軸は「新耐震かどうか」と「旧耐震なら補強済みか」の2点です。

内見時に管理会社へ聞いておくこと

  • 建築確認の日付(1981年6月以降か)
  • 旧耐震の場合、耐震診断・補強工事の実施記録があるか
  • 非常用発電の有無と供給範囲(共用部のみか、専有部のコンセントまで来るか)
  • 停電時にエレベーターがどう動くか(自動着床装置の有無)
  • 断水時の給水手段(受水槽の有無、貯水量)
  • 共用部にビル側の備蓄があるか

この6つは内見時にその場で聞けます。持ち帰って調べると、それだけで2〜3日は動きが止まります。

旧耐震だからという理由だけで候補から外す必要はありません。補強済みのビルは実務上、新耐震と同等に扱える場合があり、賃料条件で有利になることもあります。診断結果の開示を求めて、判断材料にしてください。

備蓄スペースは何坪必要か(社員数からの計算)

根拠になるのは東京都の帰宅困難者対策条例です。事業者は、従業員全員の3日分の水・食料等を備蓄する努力義務を負っています。まず「社員数×3日分」が出発点です。

水は1人1日3リットル、3日で9リットル。主食は1人1日3食で、3日で9食です。

ただし「1人あたり何坪」という公的な基準はありません。 条例が定めているのは備蓄の中身であって、置き場所の面積ではないためです。

出発点になる実務の数字はあります。100名・3日分の水と食料で、最低4.84㎡(約1.46坪)。パレットに積んだ状態での占有面積で、1人あたりに直すと約0.015坪です。

ここに簡易トイレ・毛布・衛生用品が加わります。さらに棚へ並べて出し入れする形にすると、積み上げるより面積を取る。その2倍前後、1人あたり0.03坪ほどを見込んでおいてください。

社員数 水(3日分) 主食(3日分) 水・食料の占有面積 余白を含めた目安
20名 約180L 約180食 約0.3坪 約0.6坪
30名 約270L 約270食 約0.45坪 約0.9坪
50名 約450L 約450食 約0.75坪 約1.5坪

※占有面積は「100名分=4.84㎡(約1.46坪)」から比例で算出。

※揃える備蓄品により必要な目安は上下します。

社員20名・30名・50名の3日分の備蓄量と保管スペース目安

1か所にまとめない

保管場所は分散させたほうが実務では回ります。理由は3つです。

  • 1か所が使えなくなっても全損しない
  • 重い水を執務室の各所に分けると、取りに行く動線が短い
  • 1坪の倉庫を確保するより、既存什器の下段を使うほうが坪効率がいい

書庫の下段、キャビネットの最下段、会議室の造作収納。ここに水を入れる前提で什器を選ぶと、後から棚を買い足すより確実に収まります。什器選定は契約後1〜2か月目に動くので、そのタイミングで必ず入れてください。

見落とされやすいのが入替の動線です。賞味期限は5年前後のものが多く、いずれ全量を入れ替えます。搬入経路・エレベーターのサイズ・荷捌きスペースの有無は物件で決まるため、内見時に見ておく項目になります。

備蓄品は何を選べばいいのか(缶詰・レトルト・水なしで食べられるもの)

当社代表の林は、以前に災害備蓄品の仕事に携わっていました。当時いちばん多かった相談が「何を選べばよいか」です。実際に聞かれてきたことを、そのまま書きます。

缶詰は、食べ終わった後に空き缶が大量に出ます。 50名×3日分なら数百個。災害時はゴミの回収が止まるため、その空き缶をオフィス内のどこに置くかという問題になります。軽量でかさばりにくいレトルトパックを選ぶ企業が少なくないのは、この理由です。

水やお湯が必要かどうかも分かれ目です。 アルファ米は軽くて保管しやすい一方、水またはお湯が要ります。断水と停電が同時に起きる前提なら、水なしでそのまま食べられるタイプを一定量混ぜておく判断もあります。

最も抜けやすいのはここです。備蓄して終わりになりがちですが、実際に試食して味と食べやすさを確認しておくことが効きます。

災害時は精神的な負担が大きい状態です。食べ慣れないもの、口に合わないものは、あるのに手が付かない。社員が受け入れやすいものを選んでおくことが、実際には結果を分けます。

選択軸 缶詰 レトルト・パウチ アルファ米
調理の要否 不要 不要(そのまま食べられる商品あり) 水またはお湯が必要
保管時のかさ 大きい 小さい 小さい(戻すと増える)
食後のゴミ 空き缶が大量に出る 少ない 少ない

ゴミの量と水の要否は、そのまま「移転後にどれだけスペースを取られるか」に跳ね返ります。品目を決めてから収納量を決める、という順番で考えてください。

帰宅困難者対策として、オフィスに何を用意するのか

一斉帰宅抑制とは、災害発生直後に社員を一斉に帰宅させず、社内に留めておく方針のことです。東京都が事業者に求めています。

「3日間、社内で過ごす」前提でオフィスを見ると、効いてくるのは食料より場所とトイレです。

50名が3日間滞在するなら、横になれる場所が要ります。会議室・休憩スペースの床面積と、階のトイレの数。この2つは物件で決まり、後から増やせません。

物件選定時に確認する項目は次のとおりです。

  • 非常用発電の有無と供給範囲(照明だけか、コンセントも生きるか)
  • 断水時の給水手段(受水槽・貯水量)
  • 同一フロアのトイレ数と、他テナントとの共用状況
  • 携帯が繋がらない前提での連絡手段(固定回線・災害用伝言板の運用)
  • 一時滞在できるスペースの面積(会議室・リフレッシュスペース)

備蓄の量を決めるときは、人員構成も見てください。女性社員の比率で衛生用品の必要量は変わります。来客・協力会社の分をどこまで見るかは、社内で先に決めておいてください。

BCPを理由に坪数と賃料が上がる。社内稟議をどう通すか

BCP対応分の坪数と費用は、最初の稟議書に項目として入れてください。 後から追加で出すと、ほぼ止まります。

備蓄に1.5坪使うということは、その分の賃料が毎月上乗せされるということです。金額としては大きくなくても、「聞いていない支出」として出てくると差し戻されます。

積み方で注意したいのは、将来の増員分と備蓄スペースを別々に積まないことです。1〜2年後の増員を見込んだ余白と、備蓄棚のスペースを別建てで足すと、必要坪数が実態より大きく出ます。合算で設計してください。

耐震グレードの高いビルは坪単価が上がる傾向があります。

ただし、物件情報サイトでエリア平均を見ると、実勢より高い数字が出ます。大型ビルの大区画が母数に入っているためです。30〜100坪の中小ビルという条件で見ると、実勢はもう少し手前にあります。平均値だけを見て候補から外す必要はありません。

稟議を2回止めないために、もう一点。二重賃料も最初から予算に入れておいてください。

二重賃料とは、新オフィスの賃料と旧オフィスの賃料が重なって発生する期間の費用です。解約予告は原則、新オフィスの契約後に出すため、構造的に発生します。

避けるものではなく、期間を短くする・フリーレントで圧縮するもの。この扱いで説明すると通りやすくなります。

BCP費用と二重賃料が別々のタイミングで出てくると、稟議が2回止まります。移転費用の総額として、一度で出してください。

BCPの検討は移転スケジュールのどこに入れるのか

耐震・備蓄スペースの条件整理は、物件を探し始める前です。契約後ではありません。

前提として、物件探しの開始は入居希望日の5〜6か月前が理想です。内訳は探し始め〜契約に約3か月、契約〜入居に約3か月。

2026年は空室率が低く、貸主から「契約後3か月以内に入居してほしい」と言われることが増えました。契約後にゆっくり準備する余裕はありません。

時期 BCP関連でやること
探し始める前 耐震の許容ライン・備蓄坪数・必要設備を決める
内見時 建築確認日、非常用発電、トイレ数、搬入経路を確認する
契約前 レイアウト方針に備蓄収納を織り込む/内装会社に共有する
契約後1〜2か月目 備蓄品を選定・発注する(什器発注と同じタイミング)
契約後3か月目 什器搬入と合わせて備蓄を搬入・配置する

物件探し前から契約後3か月目までのBCP工程

条件が固まっていない状態で内見に行くと、その場で判断できません。「持ち帰って検討します」を2回やると、良い区画は消えています。

内装・什器・通信のリードタイムは契約前から並行して動かしてください。契約してから内装会社を探すのでは、3か月に収まりません。

解約予告は原則、新オフィスの契約後に出します。先に出すと、行き先が決まらないまま退去期限だけが迫ります。

よくある失敗(BCPを移転後に回した会社に起きること)

ご相談の中でよく聞くのは、この3つです。

移転してから備蓄をそろえようとして、置き場所が足りない。 坪数を決める段階で備蓄を見込んでいないと、いざ買ったときに入る場所がありません。棚を足すか、執務スペースを削るか。どちらにしても、想定より手狭なオフィスになります。

段ボールに日付が書かれておらず、いつ買ったものか分からない。 賞味期限を管理できず、結局まとめて買い直すことになります。搬入した日と期限を箱の側面に大きく書いておくだけで防げます。

「備蓄品は移転後に買う」と決めたまま1年放置される。 移転直後は他の残務が多く、優先順位が下がります。契約後の工程に入れておかないと動きません。

あわせて、賞味期限の入替を誰が担当するかも決めておいてください。購入時に、担当者・棚卸しの時期・入替の予算までセットにしておくと運用が止まりません。

よくある質問

旧耐震のビルは避けるべきですか?

避ける必要はありません。耐震診断を受けて補強工事が済んでいるビルは、実務上、新耐震と同等に扱える場合があります。診断結果と補強の実施記録の開示を求めて判断してください。旧耐震という理由で賃料条件が有利になることもあります。

備蓄スペースは何坪見ておけばいいですか?

「1人あたり何坪」という公的な基準はありません。実務では、水と食料の占有面積が100名・3日分で約1.46坪(4.84㎡)という数字を出発点にします。

簡易トイレ・毛布・衛生用品と出し入れの余白を足すと、その2倍前後、1人あたり0.03坪ほどが目安。30名で約0.9坪、50名で約1.5坪になります。

備蓄は何日分用意すればいいですか?

3日分が基準です。東京都の帰宅困難者対策条例で、事業者は従業員全員の3日分の水・食料等を備蓄する努力義務を負っています。水は1人1日3リットルで計算してください。

在宅勤務が多い場合、備蓄は全社員分必要ですか?

実務では「最大出社人数+来客」で見積もるほうが実態に合います。ただし社内の方針として全社員分を確保する会社もあります。来客・協力会社の分をどこまで見るかを先に決めておくと、発注が止まりません。

セットアップオフィスでも備蓄スペースの確保は可能ですか?

確保できますが、条件があります。セットアップオフィスは什器やレイアウトが決まった状態で提供されるため、収納の余白が限られる場合があります。内見時に、備蓄を置ける収納がどれだけあるかを実際に見て確認してください。

BCP対応のビルは賃料が高いですか?

耐震グレードの高いビルは坪単価が上がる傾向があります。ただし物件情報サイトのエリア平均は、大型ビルの大区画が母数に入るため実勢より高く出ます。30〜100坪の条件で見ると、想定より手前に収まることが少なくありません。

備蓄品は移転前と移転後、どちらで買うべきですか?

契約後1〜2か月目、什器の発注と同じタイミングが実務では回ります。移転後に回すと、他の残務に押されて1年放置されがちです。什器レイアウトが決まった時点で品目と数量を確定できる状態にしておいてください。

内見のときに耐震について何を聞けばいいですか?

建築確認の日付、旧耐震なら耐震診断・補強の実施記録、非常用発電の有無と供給範囲、停電時のエレベーターの動き、断水時の給水手段、共用部の備蓄の6点です。その場で聞けば当日中に判断材料が揃います。

まとめ

BCP対策のうち物件条件に直結するのは、耐震性能・備蓄スペース・帰宅困難者対策の3つです。

耐震は建築確認の日付で見ます。1981年6月以降なら新耐震、それ以前でも補強済みなら候補から外す必要はありません。

備蓄スペースは社員数から逆算します。公的な面積基準はなく、実務では1人あたり0.03坪ほど。1か所にまとめず、什器の下段に分散させると収まります。

備蓄品は、ゴミの量と水の要否で選びます。そして必ず試食してください。食べられない備蓄は、無いのと同じです。

坪数と費用は、増員見込みと二重賃料まで含めて一度の稟議に出します。分けて出すと2回止まります。

条件整理は、物件を探し始める前に終わらせてください。空室率が低い今、後出しした条件は間に合いません。

ご相談について

移転期限や解約予告の期限が決まっていて、BCPも同時に整えたい企業様は、まず「その期限で何をどこまで決められるか」を逆算しておくと動きやすくなります。

当社では、物件のご提案の前に、入居希望日・必要坪数(備蓄スペースを含む)・予算の内訳・稟議ルートの整理からご相談を受けています。

「今の坪数に備蓄を足せるか」「この期限で現実的か」の確認だけでも構いません。ご相談・物件提案・内見のご案内は無料です。

電話は 03-6869-5265(平日9:00〜18:00)、またはお問い合わせフォームからどうぞ。