「同じ渋谷区・同じ40坪なのに、月額の家賃が全然違う。なぜ?」
移転検討中の担当者や経営者からよく聞く話だ。
エリアや坪数が同じでも、賃料は大きく変わる。その主因のひとつが「耐震基準」と「トイレ仕様」だ。この2点を理解しているだけで、物件選びの精度がまったく変わる。
費用とスケジュールの目安は移転の全体像にまとめています。
目次
この記事でわかること
- 新耐震・旧耐震で賃料がどう変わるか
- 室内トイレ・室外トイレで、使い勝手と賃料の傾向がどう違うか
- どちらを選ぶべきかという企業の判断基準
- 賃料だけで選ぶと後悔するケース
- 移転スケジュールと意思決定で失敗しないポイント
結論
旧耐震や室内トイレの物件は、新耐震や室外男女別トイレの物件と比べて、募集賃料が低めに設定されていることがある。ただし差の大きさは、立地・築年数・設備・募集時期によって物件ごとに違い、一律の金額では示せない。候補を同じ条件で並べ、実際の募集条件で比べてほしい。
ただし「安さの理由」を理解せずに選ぶと、移転後に社員の不満・採用の苦戦・社内稟議の差し戻しなどで問題が出ることもある。
賃料だけで決めず、自社の企業フェーズや今後の採用計画と照らし合わせて判断することが重要だ。
耐震基準とは何か|1981年6月が分かれ目
適用される耐震基準の区分は、建築確認を受けた日が1981年6月1日以降かどうかで変わる。実際の建物の耐震性は、耐震診断や補強の状況で確かめる必要がある。
それ以前の基準で建てられた建物を「旧耐震基準」、以降を「新耐震基準」と呼ぶ。
- 新耐震:震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊しないことを目標とした設計
- 旧耐震:震度5程度の地震で大きな損傷を受けないことを前提とした基準
東日本大震災以降、企業のBCP(事業継続計画)への意識は高まっており、新耐震を条件にする企業もある。
ただし「旧耐震=危険」と短絡的に考える必要はない。
耐震補強が施されたビルもあり、耐震診断書や補強工事の資料が取得できる物件であれば、社内稟議上の説明もしやすくなる。
新耐震vs旧耐震|賃料差の実態
| 項目 | 新耐震 | 旧耐震 |
|---|---|---|
| 建築確認 | 1981年6月1日以降 | 1981年5月31日以前 |
| 賃料水準 | 高めに設定されていることがある | 低めに設定されていることがある(差は物件ごとに違う) |
| 立地傾向 | 新しいビルから築40年を超えるビルまで幅がある | 好立地のビルにも残っていることがある |
| BCP対応 | 自社の基準に合うかを建物資料で確認 | 耐震診断・補強の結果で確認 |
| 社内稟議 | 自社の耐震基準と、稟議に必要な資料を確認 | 自社の耐震基準と、診断・補強の資料を確認 |
| 取引先対応 | 取引先の基準を確認 | 取引先の基準と、確認を求められたときの資料を用意 |
賃料の差をどう評価するかは、企業の段階や重視する点によって変わる。候補物件の実際の募集条件で、月額と契約期間の総額を計算して比べてほしい。
また、旧耐震のメリットは賃料だけではない。
東京都心では、駅に近い好立地にも旧耐震のビルが残っていることがある。
そのため、
- とにかく立地を優先したい
- 顧客訪問が多い
- ブランド力のある住所を重視したい
という企業にとっては、有力な選択肢になることもある。
旧耐震を検討するときの確認点と、避けたほうがよいケース
旧耐震を検討するときに確認すること
- 耐震診断の結果と、補強工事の有無(資料を取得できるか)
- 自社のBCP方針やオフィスの基準に合うか
- 決裁者や取引先への説明が必要か
- 契約期間と、次の移転の予定
安全性の判断は、少人数か短期利用かでは決まりません。診断・補強の結果と社内の基準で確かめてください。
旧耐震を避けたほうがよいケース
- 自社の基準(BCP方針など)で、旧耐震のビルが認められていない
- 耐震診断・補強の資料から、自社が必要とする耐震性を確認できない
- 取引先や顧客の基準で、新耐震のオフィスが求められている
稟議を通す相手が現場の担当者とは別にいる場合は、旧耐震の物件を候補に入れる前に、決裁者がどんな説明資料を必要とするかを確認しておくと進めやすい。
室内トイレvs室外トイレ|賃料差の実態
トイレ仕様は後回しにされがちだが、実際には賃料や社員満足度に大きく影響する。
室内男女別トイレ
区画内に専用トイレがある。
- 清掃負担あり
- 動線を考える必要あり
- レイアウトによっては執務室との距離が近くなる
室外男女別トイレ
共用廊下にあるトイレを利用する。
- 女性社員から好まれるケースが多い
- 来客対応がしやすい
- 清掃負担が少ない
- 執務スペースを広く確保できる場合がある
賃料や募集の状況は物件ごとに違うため、候補ごとに確認してほしい。
| 項目 | 室内男女別トイレ | 室外男女別トイレ |
|---|---|---|
| 賃料水準 | 低めのことがある(物件による) | 高めのことがある(物件による) |
| 来客対応 | △ | ○ |
| 清掃管理 | 自社管理 | ビル管理が多い |
| 女性社員満足度 | レイアウトによっては不満が出ることもある | 好まれる傾向がある |
| 坪効率 | トイレ面積込み | 執務スペースを広く使える場合あり |
室内トイレの面積の罠
意外と見落とされるポイントだ。
室内トイレ付き物件は、契約面積の中にトイレ面積が含まれていることが多い。
そのため、
「40坪・室内トイレ付き」
と
「40坪・室外トイレ」
では、実際にデスクや会議室を配置できる執務スペースが異なる場合がある。
内見時には必ず確認しておきたい。
室内トイレで問題ない企業・室外にこだわるべき企業
室内トイレでも問題ないケース
- 来客がほぼない
- 社内メンバー中心の業務
- 男性比率が高い
- 賃料を抑えたい
室外トイレにこだわるべきケース
- 面接や商談を頻繁に行う
- 女性社員が多い
- 採用強化を予定している
- オフィス環境をブランディングに活用したい
私自身の経験では、女性社員がいる企業では室外男女別トイレを希望されるケースが多い。
レイアウトによっては執務室との距離が近く、音が気になることもあるためだ。
1〜2年後の採用強化を考えている企業ほど、この判断を軽視しない方がよい。
4パターン比較表
| パターン | 重視する点の例 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 新耐震 × 室外トイレ | 採用・来客対応・BCPを重視 | 予算に収まるか |
| 新耐震 × 室内トイレ | 耐震を重視しつつ費用を抑えたい | 女性社員や来客の使い勝手 |
| 旧耐震 × 室外トイレ | 立地・来客対応を重視 | 耐震診断・補強の資料と、社内の基準に合うか |
| 旧耐震 × 室内トイレ | 費用を重視 | 耐震診断・補強の資料、社内の基準、使い勝手 |
賃料の差は、立地・築年数・設備・募集時期によって物件ごとに違います。候補を同じ条件で並べて比べてください。
賃料より先に確認すべきこと
解約予告のタイミング
まず現在の賃貸借契約書を確認してほしい。
解約予告の期間は契約書で確認してほしい。6か月前と定められていることもある。
解約予告前から相場確認や物件収集を始めることで、移転スケジュールに余裕が生まれる。
スケジュールを逆算する
移転は、おおむね次の順番で進む。
- 物件選定・内見
- 申込・貸主審査
- 社内稟議・代表者の再内見
- 契約締結
- 内装工事
- 引越し・什器の搬入
それぞれにかかる期間は、物件・工事の内容・社内の手続きによって大きく変わる。候補が決まった段階で、解約予告の締切から逆算して確認してほしい。
契約後すぐに入居できるわけではない。工事が入る場合は、その期間も見込んでおく必要がある。
二重家賃期間をどう短縮するかも重要なテーマになる。
セットアップオフィスという選択肢
最近は内装・家具付きのセットアップオフィスが増えている。
- 工事期間短縮
- 初期費用削減
- スピード移転
というメリットがある。
一方で、原状回復範囲が広い場合もあるため、退去時コストも確認したい。
良い物件は検討中に埋まる
条件のそろった物件は、検討している間に募集が終わることもある。
気になる物件が見つかったら、
- 代表者再内見
- 稟議
- 社内共有
を早めに進めることが重要だ。
意思決定のスピードが結果を左右する。決める日と決める人を、候補を見る前に決めておきたい。
FAQ
Q1. 室内トイレでも女性社員に受け入れられますか?
レイアウトによっては執務室との距離が近く、音が気になるため利用を控える社員がいるケースもあります。
特に女性社員が多い職場では、トイレの位置を確認しておくことをおすすめします。
また、近隣に商業施設やオフィスビルがある場合は、そちらのトイレを利用する社員もいます。
Q2. 代表者が後日内見でも大丈夫ですか?
可能ですが、人気物件はその間に申込が入ることが多いです。
担当者内見と代表者内見はできるだけ近い日程で設定することを強くお勧めしております。
Q3. 解約予告後から探し始めても間に合いますか?
間に合う場合もありますが、選択肢は減ります。
解約予告を出す前から、候補物件と、工事・契約の日程を確認しておくと安心です。
Q4. 申込後にキャンセルできますか?
申込書の内容や、条件の合意・契約手続きの進み具合によって扱いが変わるため、一律には言えません。キャンセルの可能性がある場合は申込の前に仲介会社へ伝え、個別の判断が必要なときは弁護士にご相談ください。
安易な申込ではなく、申込前に意思決定を固めておきたいところです。
Q5. 旧耐震の審査は通りやすいですか?
貸主審査は借主の信用力が中心であり、決算書などの総合的な判断になります。
Q6. 原状回復費用はいくらですか?
金額は、契約で決まった原状回復の範囲、指定業者の有無、入居時の工事内容によって大きく変わるため、一律には示せません。退去が決まったら、まず契約書と指定業者の見積もりで範囲を確認してください。
まとめ
- 旧耐震や室内トイレの物件は、賃料が低めに設定されていることがある(差は物件ごとに違う)
- 室外男女別トイレは、女性社員や来客対応の面で評価されやすい(賃料は物件ごとに確認)
- 安さには理由がある
- BCP・採用・稟議への影響も考慮する
- 解約予告と移転スケジュールを先に確認する
- 良い物件は比較中に埋まる
- 意思決定のスピードが移転成功を左右する
オフィス移転は物件探し以上に、スケジュール管理と社内調整が重要だ。
「良い物件を見つけてから考える」のではなく、
「いつまでに何を決めるか」
を先に整理することが成功への近道になる。
あわせて読みたい:オフィス移転チェックリストいつ・何をすべきか時期別に解説、なぜ今、セットアップオフィスの人気が急上昇しているのか、オフィス移転のBCP対策
こんな状況なら一度整理してみませんか?
- 解約期限まであと何ヶ月あるか確認したい
- 今の坪数で将来の増員に対応できるか不安
- 旧耐震や室外トイレ物件のリスクを整理したい
- 移転スケジュールが現実的か確認したい
「いつまでに移転する必要があるのか」
「今から動いて間に合うのか」
「解約予告はいつまでに出すべきか」
この3点を整理するだけでも、移転の失敗リスクは大きく下がります。
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