「同じ渋谷区・同じ40坪なのに、月額の家賃が全然違う。なぜ?」
移転検討中の担当者や経営者からよく聞く話だ。
エリアや坪数が同じでも、賃料は大きく変わる。その主因のひとつが「耐震基準」と「トイレ仕様」だ。この2点を理解しているだけで、物件選びの精度がまったく変わる。
目次
この記事でわかること
- 新耐震・旧耐震で賃料がどう変わるか
- 室内トイレ・室外トイレで何円差が出るか
- どちらを選ぶべきかという企業の判断基準
- 賃料だけで選ぶと後悔するケース
- 移転スケジュールと意思決定で失敗しないポイント
結論
旧耐震+室内トイレの物件は、新耐震+室外トイレの物件と比較すると、条件によって坪3,000円以上安くなることがある。40坪なら月12万円超、年間144万円以上の差になる。
ただし「安さの理由」を理解せずに選ぶと、移転後に社員の不満・採用の苦戦・社内稟議の差し戻しなどで問題が出ることもある。
賃料だけで決めず、自社の企業フェーズや今後の採用計画と照らし合わせて判断することが重要だ。
耐震基準とは何か|1981年6月が分かれ目
建物の耐震性は1981年6月の建築確認で大きく変わる。
それ以前の基準で建てられた建物を「旧耐震基準」、以降を「新耐震基準」と呼ぶ。
- 新耐震:震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊しないことを目標とした設計
- 旧耐震:震度5程度の地震で大きな損傷を受けないことを前提とした基準
東日本大震災以降、企業のBCP(事業継続計画)意識が高まり、新耐震を必須条件にする企業は増えている。
ただし「旧耐震=危険」と短絡的に考える必要はない。
耐震補強が施されたビルも多く、耐震診断書や補強工事の資料が取得できる物件であれば、社内稟議上の説明もしやすくなる。
新耐震vs旧耐震|賃料差の実態
| 項目 | 新耐震 | 旧耐震 |
|---|---|---|
| 建築確認 | 1981年6月以降 | 1981年6月以前 |
| 賃料水準 | 高い | 坪3,000円以上安い傾向 |
| 立地傾向 | 新築〜築20年が多い | 都心一等地に残りやすい |
| BCP対応 | ○ | △(補強次第) |
| 社内稟議 | 通りやすい | 要説明 |
| 取引先対応 | 問題なし | 確認を求められる場合あり |
40坪で坪3,000円差なら月12万円、年間144万円の差になる。
この差を大きいと考えるか、小さいと考えるかは企業フェーズによる。
また、旧耐震のメリットは賃料だけではない。
東京都心では、駅近・好立地のビルほど旧耐震が残っているケースも多い。
そのため、
- とにかく立地を優先したい
- 顧客訪問が多い
- ブランド力のある住所を重視したい
という企業にとっては、有力な選択肢になることもある。

旧耐震を選んでいい企業・避けるべき企業
旧耐震で問題ないケース
- コスト最優先のスタートアップ期
- 社員数が少なく来客も限定的
- 耐震補強済みで診断書が取得できる
- 2〜3年後の再移転を前提にしている
旧耐震は避けたほうがいいケース
- 採用ページにオフィス写真を使い、ブランディングに活用したい
- BCPを社内方針として明文化している
正直に言うと、稟議を通す相手が現場担当者とは別にいる場合、旧耐震は説明コストが高い。
担当者が納得していても、
「なぜ今どき旧耐震なのか」
と決裁者から差し戻されるケースは珍しくない。
室内トイレvs室外トイレ|賃料差の実態
トイレ仕様は後回しにされがちだが、実際には賃料や社員満足度に大きく影響する。
室内男女別トイレ
区画内に専用トイレがある。
- 清掃負担あり
- 動線を考える必要あり
- レイアウトによっては執務室との距離が近くなる
室外男女別トイレ
共用廊下にあるトイレを利用する。
- 女性社員から好まれるケースが多い
- 来客対応がしやすい
- 清掃負担が少ない
- 執務スペースを広く確保できる場合がある
その分、賃料は高くなる傾向がある。
| 項目 | 室内男女別トイレ | 室外男女別トイレ |
|---|---|---|
| 賃料水準 | 比較的安い | 比較的高い |
| 来客対応 | △ | ○ |
| 清掃管理 | 自社管理 | ビル管理が多い |
| 女性社員満足度 | レイアウトによっては不満が出ることもある | 好まれる傾向がある |
| 坪効率 | トイレ面積込み | 執務スペースを広く使える場合あり |
室内トイレの面積の罠
意外と見落とされるポイントだ。
室内トイレ付き物件は、契約面積の中にトイレ面積が含まれていることが多い。
そのため、
「40坪・室内トイレ付き」
と
「40坪・室外トイレ」
では、実際にデスクや会議室を配置できる執務スペースが異なる場合がある。
内見時には必ず確認しておきたい。
室内トイレで問題ない企業・室外にこだわるべき企業
室内トイレでも問題ないケース
- 来客がほぼない
- 社内メンバー中心の業務
- 男性比率が高い
- 賃料を抑えたい
室外トイレにこだわるべきケース
- 面接や商談を頻繁に行う
- 女性社員が多い
- 採用強化を予定している
- オフィス環境をブランディングに活用したい
私自身の経験では、女性社員がいる企業では室外男女別トイレを希望されるケースが多い。
レイアウトによっては執務室との距離が近く、音が気になることもあるためだ。
1〜2年後の採用強化を考えている企業ほど、この判断を軽視しない方がよい。
4パターン比較表
| パターン | 賃料水準 | 向いている企業 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| 新耐震 × 室外トイレ | 最高 | 上場準備・採用重視 | 高予算が必要 |
| 新耐震 × 室内トイレ | やや高め | コスト重視・来客少 | 女性社員の不満リスク |
| 旧耐震 × 室外トイレ | 中間 | 立地優先・来客対応重視 | 耐震説明が必要 |
| 旧耐震 × 室内トイレ | 最安 | 小規模・コスト最優先 | 複合リスクあり |

賃料より先に確認すべきこと
解約予告のタイミング
まず現在の賃貸借契約書を確認してほしい。
多くのオフィスでは6ヶ月前解約予告が必要だ。
解約予告前から相場確認や物件収集を始めることで、移転スケジュールに余裕が生まれる。
スケジュールを逆算する
| フェーズ | 目安期間 |
|---|---|
| 物件選定・内見 | 1〜2ヶ月 |
| 申込・貸主審査 | 2週間 |
| 社内稟議・代表者再内見 | 1〜2週間 |
| 契約締結 | 3〜4週間 |
| 内装工事 | 4〜8週間 |
| 引越し・什器搬入 | 1〜2週間 |
契約後すぐに入居できるわけではない。
工事が入る場合は契約から入居まで1〜2ヶ月かかるケースもよくあります。
二重家賃期間をどう短縮するかも重要なテーマになる。
セットアップオフィスという選択肢
最近は内装・家具付きのセットアップオフィスが増えている。
- 工事期間短縮
- 初期費用削減
- スピード移転
というメリットがある。
一方で、原状回復範囲が広い場合もあるため、退去時コストも確認したい。
良い物件は検討中に埋まる
人気エリア・新耐震・室外男女別トイレ付きの物件は在庫が少ない。
気になる物件が見つかったら、
- 代表者再内見
- 稟議
- 社内共有
を早めに進めることが重要だ。
意思決定のスピードが結果を左右する。

FAQ
Q1. 室内トイレでも女性社員に受け入れられますか?
レイアウトによっては執務室との距離が近く、音が気になるため利用を控える社員がいるケースもあります。
特に女性社員が多い職場では、トイレの位置を確認しておくことをおすすめします。
また、近隣に商業施設やオフィスビルがある場合は、そちらのトイレを利用する社員もいます。
Q2. 代表者が後日内見でも大丈夫ですか?
可能ですが、人気物件はその間に申込が入ることが多いです。
担当者内見と代表者内見はできるだけ近い日程で設定することを強くお勧めしております。
Q3. 解約予告後から探し始めても間に合いますか?
間に合う場合もありますが、選択肢は減ります。
理想は解約予告前の3〜6ヶ月から動くことです。
Q4. 申込後にキャンセルできますか?
法的拘束力はない場合が多いですが、条件合意直前でのキャンセルはトラブルになる可能性もあります。
安易な申込ではなく、申込前に意思決定を固めておきたいところです。
Q5. 旧耐震の審査は通りやすいですか?
貸主審査は借主の信用力が中心であり、決算書などの総合的な判断になります。
Q6. 原状回復費用はいくらですか?
一般的には坪3万〜10万円程度です。
契約内容によって大きく変わるため事前確認が必要です。
まとめ
- 旧耐震+室内トイレは坪3,000円以上安くなる場合がある
- 室外男女別トイレは賃料が高い傾向がある一方、女性社員や来客対応の面で評価されやすい
- 安さには理由がある
- BCP・採用・稟議への影響も考慮する
- 解約予告と移転スケジュールを先に確認する
- 良い物件は比較中に埋まる
- 意思決定のスピードが移転成功を左右する
オフィス移転は物件探し以上に、スケジュール管理と社内調整が重要だ。
「良い物件を見つけてから考える」のではなく、
「いつまでに何を決めるか」
を先に整理することが成功への近道になる。
こんな状況なら一度整理してみませんか?
- 解約期限まであと何ヶ月あるか確認したい
- 今の坪数で将来の増員に対応できるか不安
- 旧耐震や室外トイレ物件のリスクを整理したい
- 移転スケジュールが現実的か確認したい
「いつまでに移転する必要があるのか」
「今から動いて間に合うのか」
「解約予告はいつまでに出すべきか」
この3点を整理するだけでも、移転の失敗リスクは大きく下がります。
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